共産主義者同盟(統一委員会)






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   ■22けんり春闘
  8時間働けば人間らしく暮らせる社会を
  目指して



 春闘が始まった。マスコミなどではほとんど春闘の話題は報道されないが、昨年一二月一〇日に「22けんり春闘発足集会」が開催され、今年一月二九日には全国一般全国協が「各県代表者会議」を開催した。各地で春闘総行動が計画されている。
 連合は昨年末に「連合白書」を発行し、『春季生活闘争』方針で賃金引上げ4%の目標を発表している。経団連は一月一八日に「経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)を公表し、「各企業が自社の実情に適した対応を行う『賃金決定の大原則』」を強調している。連合の賃上げ目標に対しても「一律ではなく、個々の企業に適した対応を」と求め、中小労組の取り組みでは、「実態から大きく乖離した要求水準を掲げることについては慎重に……要求を提示する前に、まず企業労使で経営状況等を十分共有すること」などとし、結論として「春季生活『闘争』」ではなく、春季「労使交渉・協議」として発信していくことが望まれる、と注文を付けている。とことん舐め切った言い分ではあるが、二〇二一春闘の実態を考えれば、根拠のない話でもない。

 春闘は歴史的には産別労働組合ではなく企業別労働組合が主流となった日本の労働運動の中で、企業ごとに労働条件が異なると労働のダンピングにつながることから、同じ時期に共同して賃上げ交渉をすることによって、全体の交渉力を強め、労働条件向上を勝ち取る方法として一九五〇年代から取り組まれてきた。しかし、この間「春闘の終焉」が言われて久しいが、トヨタなどの大企業労組は要求も妥結額も公表せず、「春闘」の果たしてきた社会的意義を労組が否定するところまで来ている。
 闘う労働組合は、地域での共闘を強め、様々なネットワークを駆使して闘いを前進させている。そのキーワードは「八時間働けば生活できる社会を」である。
 新型コロナウィルスの感染拡大は第六波となり、オミクロン株が過去最大の感染者数を更新し続けている。その世界的なパンデミックを利用して、資本家階級はまたしても「ショックドクトリン」の手法で行き詰まった資本主義の延命を図ろうとしている。岸田政権の「新しい資本主義」も、経団連の「サステイナブルな資本主義」もこの文脈上にある。
 そのポイントは、労働時間管理からの自由、雇用責任からの自由、そして「エンゲージメント」という名の労働者の奴隷化である。
 二〇一八年、安倍政権の「働き方改革」で残業時間の上限規制が労災の過労死認定基準を超える内容で法制化された。コロナ禍で長時間労働を強いられる労働者が増える一方で、休業や時間短縮、失業のために収入が激減して生活に困窮する労働者も増加した。特に非正規雇用労働者に著しいしわ寄せが起こっている。そもそも契約が「シフトによる」とされて、所定労働日数や時間が定められておらず、シフトが入らなければ収入もないという不安定雇用の労働者も少なくない。仕事量の変動が生活破壊に直結する。雇用調整助成金や給付金と言ったコロナ対策のセーフティネットも、「シフト」が決まっていなければ使えないという事態に直面した。
 資本家は、リスクへの備えは「自己責任」とばかりに、兼業・副業の促進を強めている。「空いた時間でウーバーイーツ」というわけだ。
 他方で、長時間労働の代表格ともいえる「自動車運転者」の労働時間について、一月二一日、第三回労働政策審議会労働条件分科会 自動車運転者労働時間等専門委員会トラック作業部会が行われた。「改善基準告示」の見直しが審議されているのだが、労使の見解は対立したままである。現行の「改善基準告示」では、一カ月の拘束時間二九三時間、年間三五一六時間、年六回三二〇時間までの延長可、一日一三時間、最大一六時間(一五時間超えは週二回まで)、運転時間は二日平均九時間、二週平均して週四四時間、連続運転四時間、休息時間一日八時間……。というものである。労働側委員は拘束時間を月二七五時間、休息時間一日一一時間などを主張しているが、使用者側は現行通りか時間のさらなる延長、休憩の分割取得などを主張している。仕事に合わせて柔軟に働けというのがその理由だ。

 経労委報告でも、「働き方改革フェーズⅡ」として、テレワークやフレックスタイム制など「場所・時間にとらわれない柔軟な働き方」と飾り立てて推奨している。しかしこの間、明らかになっている現実は、テレワークや持ち帰り残業などでの過労のために病気になっても労災申請では自宅での労働時間は会社によってことごとく否定され、在宅労働の成果物は不当に過小評価されて、長時間労働とは認められないのが実態である。本質は労働時間の管理をせず、労働生産性を高め「アウトプット(付加価値)の最大化」のみを目標とするものである。究極的には、時間ではなく成果ではかるとして裁量労働制を一般化して働かせ放題の労働を強く求めているのだ。合わせて、これを実現するために。「エンゲージメントを高める」というキーワードが頻繁に使われている。「エンゲージメント」とは「個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係」と説明され、そのために「柔軟な働き方」や「企業理念・事業目的の共有」、「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」が必要とされている。その求めるものは、「働き手が主体性・自律性をもって自らの知識やスキルを最大限に発揮」することであり、「専門性・創造性を発揮して成果を生み出す業務は労働時間の長短によって評価することには適さない」として、裁量労働制に行きつくのである。企業の求める成果を時間にとらわれず生み出せ、というのが本音である。
 マルクスの語った「隠された奴隷制」はまさに日本の労働そのものだ。
 労働は売っても魂は売らない! その鍵となるのは労働時間の制限だ。労働時間規制を破壊しようとする資本家階級の企みに対して、全力で闘いぬこう。


 


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